ただいま、宮城の実家に帰省中。
とはいえ、俺が一人暮らしを東京で始めてから、両親が宮城に移ったので、息子的には、周りに友達もいないし、子供の頃遊んだなぁ、的な場所もない。
しかし、さすがに、何度となく来てるので、馴染んできましたが。
そんな実家にて。
両親と会って、思いだした事が。
家族で牛タン屋に行ったときの話。
家族団らんの食事中。店主が現れ、こう言った。
「お食事中すいません。あの…….サインを…….」
ん?名前を聞くこともなくいきなり。
でも、俺の方を見てるから、俺に言ってるのは間違いないようだ。
店主「ライブでこちらに?」
俺「はぁ…….」
店主「サインを…….」
俺「いやいやいやいや!そんな、とんでもない」
俺、考える。
「(牛タン屋でサイン?普通芸能人とかだろ。俺なのか?本当に俺のサインが欲しいのか)」と。
しかし、ほろ酔い加減のうちの父親。嬉しいのかなんなのか、店主に答え、話し出す。
「いやぁ、うちの息子、明日Zeppでライブでね。今日は里帰り中なんですよ。」
「そうですか。家族でいいですねぇ」
「そうですか?ハッハッハッ」
…………..勝手に盛り上がる二人。
店主と親父は、その後も話し続け。
しかし、まだサインがあきらめきれないんだろう、店主。
こちらにも話を振ってくる。
適当に話を合わせる。
だが、だんだん店主と俺が噛み合わなくなってきた。
店主「何度か本店の方にもいらっしゃっていただきまして…….」
俺「(本店?行ったか?俺?)」
店主「いつも〇〇さんが~」
俺「(〇〇さん…….)」
店主「キョードーさんにはいつも…….)」
俺「!!!!」
確信しました。
「(こいつ、誰かと間違ってやがるな)」と。
うちらはキョードーではなくGIPなんでね。
疑問が確信に変わった時。
ちゃんと、言えば良かったんです。人違いですよ、と。
しかし….
店主は、うちの親父を、どこぞのアーティストの親父だと思って話してる。
うちの親父は、店主はピロウズのベーシストの話をしてるんだと、疑いもなく確信して、ピロウズのベースである息子の話を続ける。
そんな二人の会話。
見事に噛み合っちゃってて、親父、楽しそうなんです。
店主「ライブの時はお父さん行かれるんですか?」
親父「いやぁ、なかなかねぇ。行きたいんですけどねぇ。今度一緒にどうです(笑)?」
店主「行きましょう!」
なんじゃそりゃ。
しまいにゃ、親父、
「サインはどの辺に貼ってくれるの?」
「お父さん、どこがいいですか?」
「そうだなぁ。ここか?それともここか?いっそ入口に貼ってもらおうかな?なんちゃって。ハッハッハッ」
…………..言えない。
今さら人違いです、なんて言えない。
絶対に言ってはいけない。
息子にできる事といえば、さっさと食事をすませ、一刻も早くこの場を立ち去る事だ。
ビールを流しこみ、麦めしをかきこみ、丁重にサインをお断りして、みんなと共に店を出る。
丁寧にも店主が店の外まで見送りに。
すると、親父。
「そうだなぁ。やっぱり入口がいいんじゃないか?いっそ看板に貼ってもらうか?ハッハッハッ」
…….もう勘弁してくれ。すまん、親父。
俺は親父の期待には応えられないんだ。
ダメな息子なのだ…….
というような事が数年前にあったのを思いだした。
仙台ライブでこの話をした際、打ち上げで、ぴーちゃんに、
「いい話だ(笑)」
と、しみじみ誉められたのも思いだした(笑)。
それ以来、その店には行ってない。
行けるか(笑)!